家づくりには窓が大事って聞くけど、どんな種類の窓があるの?
家づくりをこれから始めようとする方、始めて間もない方は分からない事だらけだと思います
窓にも樹脂サッシやアルミサッシやら色々種類がありますが、結局何を選べばいいかわからなくなりますよね。
家づくりにおいて窓選びは一番大切です。
窓選びに失敗すると後悔する家づくりにまっしぐらになってしまいます。
一級建築士、一級施工管理技士の資格を持ち、住宅メーカーで15年勤務し、延べ1000棟以上を担当した私が窓の種類、選び方について詳しく解説します
この記事を読むと窓の種類、その特徴が分かりどんなサッシを選べばいいかがわかります。
窓には3つの要素があります。
- サッシの材料の種類
- ガラスの種類
- スペーサーの種類
この3つで各々何を選ぶかが大切です。
結論から言うと
- サッシの材料→樹脂サッシ
- ガラスの種類→トリプルガラス
- スペーサーの種類→樹脂
と、なります。
以下詳しく解説していきます。
サッシの種類と断熱性の目安
サッシとは窓のフレームの部分になります。
サッシが重要な理由としては2つあります。
- サッシの種類により断熱性に大きく差があるため
- サッシを固定するアングルがアルミ製だと家の壁内部で結露する可能性があるため
サッシ枠が何で出来ているかで窓の性能が大きく変わりますので選ぶ際は注意が必要です。
日本はサッシの性能で諸外国と比較して大きく出遅れてます。
日本より冬の寒さが厳しいお隣の韓国では断熱性の大きい樹脂サッシが8割を締めていますが
日本での普及率は2割程度です
大手住宅メーカーはほとんどがアルミ樹脂複合サッシを採用してるんだから、安心できるんじゃないの〜!
と、思われる方もいらっしゃいますが、このあと説明する断熱性能を数値で比較してもらうと
樹脂サッシの重要性を理解していただけると思います。
なお、以下の文で出てくる熱伝導率とは小さい程断熱性が高いものとなります。
樹脂サッシ 熱伝導率 0.17 (W/m・K)
樹脂サッシとは窓のフレームが全て樹脂で出来たサッシです。
断熱性で言うと3つの中でトップです。
また、樹脂サッシはアングルも樹脂で出来ている為、壁内部で結露する可能性が極めて低いです。
現在、日本の住宅での樹脂サッシの普及率は20%程度ですが、徐々に増えつつあります。
ですが、大手住宅メーカーでは樹脂サッシは採用率が低いです。
なんで、大手の住宅メーカは樹脂サッシを採用しないの?
その理由としては、
大手は少しのコストアップが会社全体で考えると莫大なコストアップにつながるため、なかなか仕様を変えることは難しいからです。
例えば 樹脂サッシに変更することで1件あたり10万円のコストが掛かる、となった場合
年間5000棟×10万円 =5億円 のコストアップとなります。
また、大手住宅メーカーはサッシに関して自社の製造ラインを持っていることがほとんどです。
アルミ樹脂複合サッシから樹脂サッシに変更するとなると、製造ラインの大幅な見直しが必要になるため、樹脂サッシの方が性能が良いからといって簡単に変更するのは難しいです。
アルミ樹脂複合サッシ
アルミ樹脂複合サッシとは、外部側がアルミで出来ており、室内側が樹脂で出来ているサッシになります。
最近では主流となっていますが断熱性は樹脂サッシと比較すると劣りますし、冬季には枠が結露する可能性が大きいです。
また、アルミ樹脂複合サッシを柱に固定するアングルはアルミで出来ている為、アングルが結露します。
この結露の厄介なところは目に見えないところ(アングル)で結露する、ということです。
通常、柱とサッシを固定している箇所は壁の内部になります。
結露で柱が湿ると家の耐久性が悪くなります。
そういった理由からもアルミ樹脂複合サッシはオススメしません。
アルミサッシ 熱伝導率 236(W/m・K)
アルミサッシは20年ほど前の住宅では当たり前のように使用されてましたが、現在では戸建て住宅ではほとんど使われることがなくなりました。
理由としては、ドンドン戸建て住宅が省エネ化が進む中で、アルミサッシの断熱性の低さが敬遠されるようになったからです。
今でも、一部の集合住宅では使われていることがありますが、これから戸建て住宅を建てよう、という方は絶対に選んではいけないサッシです。
アルミは樹脂の1000倍熱を通しやすい物質です。そのため、間違いなく結露しますし、窓枠や窓まわりのカーテンなどがビショビショになり、カビやダニの原因にもなるので全くオススメ出来るものではないのでご注意ください。
ガラスの種類とU値の目安
ガラスの断熱性はU値(ユーチ)で表すことが多く、この数値は小さい程断熱性が良い物となります。
※U値:内外温度差が1℃だとしたときにその物質1㎡で1時間にどれだけ熱量が移動したかという数値
ガラスの枚数
ガラスの枚数により熱の通しやすさが変わります。
性能の良い方からトリプル、ダブル(複層)、シングルとなりますが、今どきシングルガラスを採用している住宅会社はないです。
ダブルか、トリプルで悩まれる方が多いと思います。
同じ条件でダブルガラスとトリプルガラスの性能を比較してみました
YKK APさんのサッシでAPW330(ダブルガラス)とAPW430(トリプルガラス)で比較すると(ともに引違い窓、アルゴンガス封入)
ダブルガラス のU値は 1.3(W/㎡・K)
トリプルガラスのU値は 0.75(W/㎡・K)
です。
トリプルガラスの方が、ダブルガラスよりおよそ2倍程性能が良い、という値になります。
家全体で言うと、35坪程の家だと窓の面積がおよそ30㎡程なので
(屋内と屋外の温度差が15度だとすると)
1時間に家から逃げていく熱の量は
ダブルガラス:1.3×30×15=585W
トリプルガラス:0.75×30×15=337.5W
となり、その差およそ250Wとなります。
一般的な電気ストーブを30分間つけっぱなしにしている熱量がダブルガラスからは逃げていく、という計算になりますね。
これは、1ヶ月間で換算すると180KWの差になります。
180KWだとおよそ5000円の差です。(1KW=27円で換算)
これが何10年も住み続けるとなると大きな差になってきそうですよね。
特に電気代は年々上がってます。
家を建てるときはたった、5000円くらい、と思いがちですが、何年も住み続ける、ということを理解しておくといいかと思います。
充填空気について
ダブルガラス、トリプルガラスの場合はガラスとガラスの間に入れる空気を何にするかでガラスの断熱性が変わります。(真空にする、という方法もありますが、一般的ではないためここでは割愛します。性能は真空が一番良いです)
ガスをガラスの間に入れることで熱を伝わりにくくします。
ガスの細かい粒子が熱を伝わりにくくする、というイメージです。
- クリプトンガス:熱伝導率は0.009(W/m・K)
- アルゴンガス:熱伝導率は0.016(W/m・K)
- 乾燥空気:熱伝導率は0.024(W/m・K)
これもYKKさんの資料から、同じサッシで比較してみます。
(トリプルガラス、引違いサッシにおいて)
クリプトンガス:U値が0.52(W/㎡・K)
アルゴンガス:U値が0.74(W/㎡・K)
となります。
0.22(W/㎡・K) の違いが生まれます
この差も家全体で考えると先程のトリプルガラスとダブルガラスの違いと同様に
1ヶ月で1800円程の差となって表れます。
この差が大きいと感じるか、小さいと感じるかは人それぞれだと思いますが、
クリプトンガスを標準で採用している住宅会社があるとすれば、かなり窓に対してこだわりのある、お客様思いの住宅会社だと思います。
スペーサーの種類
スペーサーとはダブルガラス、トリプルガラスの場合にガラスの4周に挟む緩衝材のような物です。
樹脂製とアルミ製がありますが、性能が良いのはもちろん樹脂製スペーサーです。
これも同じサッシで樹脂スペーサーとアルミスペーサーで比較してみると
こちらもYKKさんの資料を参考にすると
樹脂スペーサーの窓 U値:1.31(W/㎡・K)
アルミスペーサーの窓 U値:1.37(W/㎡・K)
となります。
たった、0.06(W/㎡・K)しか変わってないやん〜
と、思いますよね。
窓全体で考えるとスペーサーって小さい部材なので窓全体の断熱性、という意味ではあまり変わりません。
では、なぜ樹脂スペーサーの方がいいかというと
アルミスペーサーだと結露しやすくなるからです。
アルミは樹脂の1000倍熱を通しやすい性質を持つのでサッシ周囲に取り付けられているスペーサーがアルミだとサッシ枠が結露を起こしやすくなります。
ガラスよりもサッシ枠の方が断熱性能が低いのでサッシ枠近辺には特に断熱性に気を遣う必要があります。
サッシ枠が結露することにより、窓枠が結露し、壁の内部まで木材が腐る、ということも考えられます。
ここでは性能の数値に囚われることなく、樹脂スペーサーを選ばれることをオススメします
まとめ
家づくりにおいて窓選びは大切です。
- 樹脂サッシ
- トリプルガラス
- 樹脂スペーサー
この3つを採用している住宅会社に間違いはないです。
理由としては窓という一般の方にとって、脇役のような存在にこだわっている住宅会社は
その他の箇所もお客様思いの家づくりをしている可能性がとても高いからです。
家づくりとなると、間取りが気になったり、外観が気になったり、部屋の雰囲気が気になったり、どうしてもイメージ先行で色々考えがちです。
ですが、住んでから満足する家には過ごしやすく快適な性能が必要です。
家の性能には窓がとても大事、というのが今まで1000棟以上建ててきた私の経験上の考えです。
またこのあたりの話は下記を参照ください。
家づくりの基準 【窓】で選んでみては?この記事を通して、間違いない家づくりのお手伝いが出来たら嬉しいです。